こんにちは、中條マキコです。
今回は、ホルン演奏家・アレクサンダー・テクニーク教師、手塚由美さんの講座チラシ、作成例をご紹介します。
大人の演奏家の「まだまだ上達する!」という気持ちをを全力でサポートし続ける、ホルン演奏家/アレクサンダー・テクニーク教師の手塚由美さんのホームページはこちら→
あたりまえですが、講座タイトルって、かなーり大事。
現代人が1日に触れる情報量は、平安時代の一生分、江戸時代の1年分なんだとか!
大河のように流れるそんな情報の中で、埋もれずに講座の存在を伝えるためには、キラーン!と輝き「ん?」と思ってもらう必要があるんです。
そう、川底に沈むダイヤモンドのようにね!
私も、以前は売れるタイトルの例を集めた本とかをみて、講座名、一生懸命考えたりしましたよ〜。
確かに、人の心を惹きつける言い回しというのは存在します。
しかし、そういうものを活用するにしても、それだけでは本当に必要な人には届きません。キッパリ。
その前にクリアにしておかなきゃいけない大事なものがあるんです!
それは、どんな人の悩みを、どう解決できるのか?そして、あなたがどんな情熱を持っているのかという核の部分。
ここがしっかりわかっていないと、目に付く要素はそろってるけど、どこかがパワー不足というものになってしまいます。
そして、届いたものの、違うお客さんが来てしまったりもするんです。
私も自分のツールを作る時、この段階でたくさんの失敗をしてきました…
では、その核の部分、どうしたらわかるのでしょう?
この記事のタイトルが「講座タイトルの作り方」ではなく「見つけ方」というところに、ヒントがあります。
では、今回は「楽譜の棒読み脱出講座」のチラシ作成の過程を通じて、その見つけ方をみていってみましょう。
目次
講座タイトルの見つけ方
今回の講座は、主催者の方が、ソルフェージュ講座のゲスト講師をお招きし、二人で担当時間を分けて講座をされるとのことでした。
最初のタイトル案には、「ソルフェージュ講座」という文字が入っていました。そうすると、ちょっとお二人で講座をするイメージが伝わりづらい印象でした。
その後たぶん、二人から講座を受けることで得られるメリットを表現できるタイトルにしようとされたのでしょう。次にお伝えいただいた講座タイトル案はこちら
「演奏を今よりアップデートする講座 想いを音に変えるテクニック」
その意図はバッチリなのですが、今度は少し、抽象度が高くなってしまいました。
抽象度が高いと言うのは、何をやるのかイメージが広すぎるということです。
この講座名からどんなことをやると想像しますか?
たとえばこの講座に参加して
- 息を吸う音がしない息継ぎの方法
- 譜面が早く読める方法
- 本番で緊張しない方法
このどれを教わったとしても「演奏を今よりアップデート」する講座じゃなかった!と思う人はいませんよね。
そう、抽象度が高いと、何をやってもいい講座になってしまうのです!
それはつまり、誰がやってもいい講座であり、つまり誰が何をやるかわからない講座とも言えてしまうのです!
そして、この講座を受けることでこの問題を解決したい!と願う熱心なお客さま以外の人も来てしまいます。
美味しい野菜カレーが出せるなら「カレーあります」と、対象範囲を広げた言葉を使って、チキンカレーやシーフードカレーが好きな人を間違って期待させ、来てもらうべきではありません。
自由ですけど、私はそう思います。これはお客様のためというより、自分のためでもあります。
どうしても解消したい悩みではなく、優先順位の低い、解決したらいいな、という悩みを解決することにもなるわけです。同じ講座をやっても、後者の方が、お客様の満足度が低くなってしまいます。
美味しい野菜カレーが食べたい!と心の底から願っている人にだけ来ていただいて、全員に120%満足してもらう、というシンプルさが、私のオススメしたいものです。
どんな人からも不満がでないなら、いいのでは?
あなたが最初からそういう講座を望んでいたのならば、いいと思います。
しかし、解決したいことリストの筆頭にくる問題が、全員同じで、それが解決できることを期待してくる人ばかり、それをあなたは解決して全員に100%満足してもらえるのに、そのチャンスを逃さなくてもいいですよね?あえて我慢や妥協や無理を選ぶ必要はないですよね。
どちらが正解というのはなく、ご自分が意図し、望んだものに誠実になることをオススメします。
どうやってタイトルを決めるか
さて、そうしたら講座タイトルを作るのに、何が必要なのか?
いえ、作らなくていいんです!自分の中から見つけてください!
野菜カレーが美味しい理由、野菜カレーにしたかった理由を思い出しましょう。
- 小さい時から馴染んだお母さんの作ったカレーだったからかもしれません。
- 自分が美味しい!と思ったお店に通いつめてやっとレシピを教えてもらったのかもしれません。
- あるいは、自分の無農薬の畑の野菜をみんなに食べてもらいたい!というところからスタートしたのかもしれません。
野菜カレーにしようと決めさせたものはなんだったのか
それを人に食べてもらおうと思ったきっかけはなんだったのか。
そんなところを探っていくと、たくさんの言葉があります。その中に、絶対あるんです。
これがこの講座の核だ!と思えるような言葉が。
今回の講座チラシの場合、いくつかの質問を依頼者さまに聞いてみました。
そこで帰ってきた答えの中に、こんな一文がありました。
音の変化や違いがわかれば「楽譜を棒読み」から脱出できて想いを音に変えられる。
これだ!と思いました。
「楽譜の棒読み」という言い方は初めて聞きましたが、楽器を少しでもやる人ならば、どんな状態なのか、どんな問題を感じているのかがはっきりとわかります。どう改善したいかも。
そして、これを講座タイトルにご提案したところ、オーケーをいただきました。
私も楽器は長くやってるんですが、には考えもつかない言葉でした。
私はいつもこうやって講座のタイトルやキャッチを見つけています。
私が考えるんじゃないのです。依頼してくださる方の発する言葉の中に、それはもうすでに存在しているものなのです。
すでにその方の中にあって、キラリと光るもの。
必死で、売れる言葉を探して作らなくても、こういった、発見されるのを待っている言葉を、見つけるだけなのです。
「譜面の棒読み脱出講座」というタイトルの効果
講座のアンケートを拝見すると、参加者6名のうち、譜面の棒読み脱出、という言葉に、まさにこれ!と、反応して参加をしてくださったという方が2名いらっしゃいました。
野菜カレー好きな方に、自慢の野菜カレーを「食べたい!」と言っていただけたというわけです。
こういう出会いは、参加者の方にとっても、主催者にとっても、ハッピーなものとなります。
そして、それがきちんと必要としているお客様に届くための努力、つまり行動をすることもとても大切。
こちらの講座は、その両方の力が発揮された結果、満員御礼となりました。
講座タイトルがいくら良くても、チラシがいくらよくても、熱意だけがあっても!それだけではきちんと必要としている方のもとには届きません。
その必要な行動を、応援し、後押ししてくれるのがチラシデザインなわけですね。
イメージしやすい言葉とは?
講座の内容のテキストをいただいたあと、タイトルと同じように文言についても「自由にイメージができてしまう」ものに対し、改善案を提案させていただきました。
講師のお二人のブログを拝見し、どんな思いで講座をされているのか、どう説明されているか、ということの情報収拾をしながら、その中から言葉を拾い、質問を送り、いただいたテキストの中からまた、言葉を拾っていきました。
結果の感情よりも行動の変化を書く
いただいたテキストの中に「今よりもっと楽しく自信を持って演奏してほしい」という言葉がありました。
これも、タイトルの時と同じように、さまざまなイメージが可能な言葉です。なので
- 今は何が問題なのか?
- 何が変わるともっと楽しくなるのか
- 何が感じられると自信を持って演奏ができるのか?
- どうやると変われるのか?
- 講座では何をすることで解決するのか?
ということをクリアにする質問をたくさんし、答えていただきました。
「もっと楽しく」「自信を持つ」というのはポジティブでいい言葉に見えますが、実はこれ、結果としての感情を表している言葉だというのはお分かりでしょうか。
何かをしたせいで、その結果楽しくなるし、何かをしたせいで、その結果自信が持てるのが実際の順番です。
結果としての感情を説明せず、行動をどう変えるかを語る。
そうすることで、言わなくてもその結果は読んだ人が自分の経験にてらしあわせて感情をイメージしてくれます。
そのほうがリアルに納得してもらえるのです。
どんな人がどうなれるのか、すんなりイメージさせる
また、「今の自分の音楽に満足していなくて、譜読みや聴く力などの基礎スキルをつけたい人」
という言葉がありました。
これも、後半はクリアですが、自分の音楽に満足していない、という言葉の示す範囲が非常に広く、基礎スキルをつけることだけで本当に満足できるのか?という疑問がわきます。
- 何が理由で満足していないのか?
- それは基礎スキルを身につければ解決できるのか?
- どうなると満足できるのか?
- 講座にくるとなぜ満足できるのか?
この講座に参加することで得られるスキル、それが足りないせいで満足できていない、という人だけに来てもらいたいので、これについてもたくさんの質問をお送りして答えてもらいました。
そして、その中から拾い出した言葉を再構築し、こんな説明文ができあがりました。
ソルフェージュ講座では、音程・音色・テンポなど、まわりの音の変化を聴きわけられる耳を育てます。
他の演奏者の音に自然と反応し、音符の行間の音楽を読み取れるようになり、表現に自信が持てますよ。
思いを音に変える楽しさを、手に入れてください。
音の変化や違いが聞き取れないのは、音に集中しすぎることで、演奏に必要な動きや、楽器の響きがジャマされてしまうから。
あなたの耳は悪くない。
音の受け取り方のコツ、お教えします。
音色の違い、合わせやすさの違い、実感してください。
この中に、私が作り出した言葉は一つもありません。
全て、講座を開催するお二人が語っていた言葉です。どんな状態が、どうなれるのか、というイメージがすうっと浮かんできませんか?
すんなりその状況がイメージできる言葉が出るまで、言葉を出しつくしてもらい、そしてその中からキラリと光る言葉を拾い上げ、並べ直す、本当にそれだけなのです。
まとめ
今回のチラシ、チラシデザインとしては、文字が多いものとなりました。
私も実際、できることならもう少し文字を少なくしてスッキリしたいと思いながら作っていました。
しかし、目にした方に、自分に合っているかどうかをきちんと見極めていただくには、必要な情報ばかり。
できるとしたら、これを面裏2面のチラシにするのがいいかもしれませんね。
今回は1面で、というご希望だったので、こう言う形になりました。
デザイン、というと、どうしてもどこかのブランドの広告みたいに、イメージを大きく使って、文字は少なく、おしゃれに、あるいは装飾的に、と考えそうになります。
しかし、それはデザインのたった一面ですし、そういうものとはそもそも狙いが違いすぎます。
デザインの本質は「機能するものであること」
講座を一番必要としているお客様の目に止まり、行動を起こさせることができるのが、よいデザインです。
見た目のキレイさ、かわいさ、おしゃれさ、に惑わされず、お客様のいちばんの悩みをどう解決できるのか?をわかりやすい言葉で語る。
製作者のわたしも、常にそのことを意識しています。
さて、そんな「伝わるチラシ」を作るための講座タイトルの見つけ方のコツのまとめです。
- その講座に対する自分の想いを語る言葉の中から見つける。
- その人がその内容でやる講座でなければ意味がないタイトルにする。
- 講座を受けた結果の感情よりも、行動の変化を書く
でした。
こういった文言を考えるときのアドバイスとして「小学生にでも伝わる言葉で書く」と、よく言われますよね。
これだ!という言葉は、あなたの中にちゃんともうすでに存在します。
誰がどうなれるのかを、自分にどんどん質問し、クリアにしていけば、必ず見つかります。
講座って、形のないものです。
最初からほんとうに明確に講座の形と内容ができている人って、実はほとんどいないんです。
そこで、チラシを作る、というステップを取り入れる。
それは、チラシを渡して知ってもらう、きてもらう、というチラシの本業をもちろん期待して作るわけですが、その働きと効果はそこだけではありません。
チラシを作る過程を通して、どんなふうにどう講座をやるか、という明確なイメージが立ち現れてくるし、クリアにならないとチラシは作れません。
これが、本当に重要なところなんですね。
つまり、チラシ作りを通して自分が本当に伝えたいこと、自分がやることへの想い、何を伝えるべきか、といったことも再認識できたり、整理できる、そしてそのステップが形になる。それがチラシです。
チラシが出来上がると、すごく講座をやる気がでる!と言ってくださる方がいるのは、そのせいなんです。
目的がクリアになると、お客様の役に立つ講座にするぞ!と思ったり、集客頑張ろう!と思ったり、新たなエネルギーが生まれてきます。
「いいチラシ」は、講座開催のブースター(推進装置)となるわけです!
ただの広告ツールじゃない、頼もしい味方であり応援団となるチラシ、制作させていただいております♪